開催レポート

Date: November 12, 2014   Edit: April 23, 2015

<登壇者> 富樫 康博 (代表取締役)

  1952年 北海道生まれ。
1974年 法政大学経済学部卒業、オンワード樫山に入社。
1991年 フィッツコーポレーション設立。香水の輸入事業を開始。

   フランス、イタリア、アメリカなどのブランドとエージェント契約。

その後、オリジナル香水の製作を開始。

  カンヌやボローニャの展示会に出展、輸出開始。

  現在は、香水だけでなく香りにまつわるライフスタイルプロダクト全般の開発を推進、

 「豊かさが香るものづくり」を掲げ、世界に新たなライフスタイルを提案し続けている。

Q : いつ頃から起業することを考え始めたのですか?

 ━━ 学生時代から起業を考えていました。理由は、“社長さん”になりたかったからです。(笑)

 香水にたどり着いたのは、前職で高級ブティックを立ち上げた際、競合他社がどこも変わりばえのしない物しか置いていないのを見た時でした。そこで、他にはない新しいアイテムを提供したいと考え、当時百貨店1階の化粧品売場にしか置いていなかった香水を、新たに取り入れることにしたのが始まりです。当時、百貨店の店頭を眺めると、並んでいる海外の香水のブランドはどれもファッションで成功しているブランドばかりで、つまりは香水もまたファッションであるという風にパッと気づいたんです。ファッションであるなら、前職で培った経験が生かせるのではないかなと思い、香水を始めました。ところが、香水の製造には薬事法が関連していて、作るのに2年かかってしまい、結局ブティックのオープン1年目には間に合わなかったという裏話があります。

 お金や経験がない中、0から起業する上で、大切なことは『社会の変わり目や流れ』を読むことだと思いました。香水もまたファッションで、ファッションというのは流れ(トレンド)に乗らないといけません。当時は、国内産業の保護と輸入関税の2つが、海外商品の新規参入のスピードを遅くし、商品価格を押し上げる障壁となっていました。しかし、これが最初の香水開発に要した2年の間に少しずつ下がってきていて、これが『社会の変わり目』なのではないかと悟りました。それがFITSのスタートです。思い立つと行動するタイプなので、一人で西麻布で「エイッ!」と会社を立ち上げました。

Q : 社長になりたい!と思ったところから、なぜそれを実現するまで行動することができたんでしょうか?

 ━━ 根拠のない自信を持つこと。とにかく社長になれる!って信じ込みました。

 しかし、29歳から30歳の頃に、一度夢を諦めたこともあります。その当時は子供もいたので、もう起業は無理だろうと諦めていました。しかし、諦めた後の2年くらいは抜け殻のような感じで、エネルギーが湧いてこなくなってしまった。目標を失ったからです。そこで、将来死の床に伏せた自分を想像し、自分自身に問いかけました。

  ”あなたの人生はどうでしたか? ━━まあまあだったよ。

   でもその割には浮かない顔をしてるね。なぜなんだい? ━━挑戦しなかったからね。”

 このとき、後悔している自分が頭に浮かびました。ただ子供や結婚を言い訳にしている自分にも気づきました。その結果、“やっぱりやってやろう!”と改めて奮起することになりました。 決断には覚悟が要ります。僕が独立するときには、『逃げない』という覚悟を決めました。夢を追う覚悟を決めました。

Q : これからの働くを考えるにあたって、富樫さんが考えていらっしゃることはどんなことですか?

 ━━ これからはデザインの時代、男女問わず若い人に有利な時代になると思います。

 これまではインフラを整える、例えるならケーキのスポンジの部分を作ってきた時代でしたが、今はその上にデコレーションする、デザインの時代です。これまでインフラを作ってきた重厚長大な産業には、肉体的な労働力が求められ、多くの場合は男性が中心となって活躍してきましたが、本質的にデザインについて言うと、事によっては男性よりも女性の方が有利かもしれません。もちろん一概にそうとは言えませんが...ただ、男性も女性もイーブンな時代になると思います。

 さらにこれからは、新しい会社・若い人たちがそこで新しいルールを作ることができる社会になります。そして、一度つくられたルールは刻一刻と変化し、そのルールにもやがて賞味期限が来ます。つまり、これからの時代はより新しいブルーオーシャンでルールを自分で作ってしまった方が有利です。それには重い荷物を背負った人、柔軟な頭を持たない高齢な人よりも、若い人の方が有利じゃないかと思います。そういった事も踏まえて仕事を見つければ、活躍もできるのではないかなと思います。

Q : 就活を控える学生に向けて、何かメッセージはありますか?

 ━━ まず自分の人生どう生きていくか、どう生きたいかを考えてみてください。

 世間的にも、自分にとっても「良い会社」に入る、これはすごくいいことだと思います。しかし、その前にまず自分の人生どう生きていくか、どう生きたいかを考えてみてください。箇条書きでもいいのです。自分にとっていい人生ってどういう人生かな?自分の人生を振り返った時、どんな時に暗い自分だったか、あるいはどんな時に明るい自分だったか。人は同じ事象を経験しても感じ方が全く違います。例えば、マラソンで凄くイキイキする人も入れば、もう苦しくて苦しくて…という人もいるでしょう。それと同じように、FITSが全ての人に対して必ずしも良い会社とはいえないと思います。

 皆さんは学生時代に、答えのある問題を多く解いてきたと思います。しかしこれから社会に出ると、答えのない問題に自らの責任で答えを出していかなければなりません。そういった事を考える時に自分を振り返ってみることが大切だと思います。 

 そして、人は何歳になっても多くの初めてを経験します。そして人は未熟です。でもそれでいいと思うんです。未熟の未は未完成の未、未完成の未は未来の未だということを信じ込むこと、そして夢を追う自分、夢が叶うということを信じ込む、覚悟を決めて決断して生きていってほしいと思っています。

<質疑応答>

  Q : パッと思いついて起業したとおっしゃっていた一方で、ストーリーを考えるというお話もありました。

     起業するまでは、どんな計画を練ったりなどしていたのでしょうか?

  A : 起業を目指した頃から、ビジネスプランを書き溜めたりはしていました。

 ただ、やりたいことで成功したいんだけど、なかなかそう上手くはいかなくて、諦めてしまいました。その後も事業計画書を何度も書き直して、三カ年計画、五カ年計画、十カ年計画とプランを立てましたが、実際には全く役に立ちませんでした。事業計画書やストーリーを描いていくとき、この資本主義経済の中では、資本をどれだけ集めることができるか、それから考えていかないと夢ばっかりが広がっていってしまいます。当たり前の話なんですが…その夢や理想は、高ければ高いほどそこにたどり着くまでには時間がかかると思います。ただし、理想を理想のままで終わりにしてしまう人と、理想に現実を少しでも近付けられる人の差異は、現実にどれだけ這いつくばってでも歩み続けることができるかどうかにあると思います。

  Q : 起業するためには「社会の変わり目を読むことが大切」とおっしゃられていましたが、

    そのために実践すべき事は何かありますか?

 A : レッドオーシャン、あるいは自分の不得意なところに意図的に情報を張り巡らせること。

 完成された社会や世界とは逆の所に情報をもっているといいと思います。例えば、自分が家業を引き継ぐ形で社長になった場合には、ある程度完成された市場の中で闘っていくことになると思いますが、たとえば香水の場合は、当時の日本ではまだまだ未熟な市場(ブルーオーシャン)でした。私は今でも完成された所(レッドオーシャン)ではなく、その逆の所(ブルーオーシャン)の情報を得るようにしています。

 そして今は、自分の得意分野や専門分野ではないところ、“香り”ではないところの情報を得るようにしています。自分の得意分野だと、取捨選択の際にどうしても自分のバイアスがかかってしまうからです。逆に自分の不得意なところだと取捨選択のための判断力や価値観がない状態なので、情報を情報としてそのまま受けとめて現状と比較し、純粋な差異を感じられることがかなりあります。休みの日には美術館など、日頃関わりのない所に行くと、ある時「ピン!」とひらめきがあったりするので、そういう方法論は実践しています。

  Q : 起業するにあたって、メーカーという形態を選んだ経緯について教えてください。

  A : 最初はメーカーとして会社を始めたのではなく、『バイキング』 から始まりました。

 当時は今と違って、海外のモノを直接海外に行って買うことが容易ではなく、情報もとても少ない時代だったので、海外の良い物を集めてきて日本で売る『バイキング』、つまり商社として事業を始めたのが最初です。

しかし、エージェント契約を海外の企業と交わして、その会社の商品を日本で売るというビジネスには限界があります。なぜかというと、まずその販路が日本だけに限定されてしまうから。そしてもう一つは、エージェント期間が終わればその会社の商品を売る権利がなくなり、それまであった売上が0になってしまうからです。そこで、自社でオリジナルの商品を作り、メーカーとしての機能を持つことを決めました。自社のオリジナル商品であれば、その商品との契約は商標登録などをすれば永続的で、かつ多くの国に対して売ることが可能です。そういった経緯があって今のメーカー兼商社という事業形態に至っています。

  Q : 今後のFITSのビジョンを教えてください。

  A : ビジョンのコピーとして『世界をときめかせるライフスタイルの創造』ということを言っています。

 今日着ていく洋服がないなんていうことがあると思いますが、衣替えの時期になるとタンスが溢れていることってありますよね。「着る」ものはそこにある、でも今日のオケージョン・TPOに合った洋服、今日このタイミングで自分を表現できる洋服がない、だから着るものがない。そういったことを解決する豊かなライフスタイル、生活のスタイルそのものを、FITSがオリジナリティを持ってクリエーションしていこう、そう考えています。そして、それが「日本だから通用するんでしょ」と言われることではなく、世界に通用するものとして、アジアに、そして世界に発信していくことをスタートしています。

 さらに、2015年の春から動き出そうと思っているのが、プロジェクト『2020』です。ご存じのとおりオリンピックイヤーである2020に向けて、世界中の目が日本に向きます。[中略] 日本のあらゆるものが取り上げられることになると考えているので、日本の良いものをプロダクトに変えて世界に発信していきたいと考えています。

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